上顎前歯部歯肉退縮に対して根面被覆術を行った症例

マイクロスコープ歯周病治療2023.11.09

根面被覆は、さまざまな原因によって起こった歯肉退縮(歯茎が下がること)を、外科的に被覆、つまり覆うことを言い、手術は様々な方法があります。

歯肉退縮を起こしやすい要因としては、

・歯を支えている骨が、最初から穴があいていたり(開窓)裂開しており歯の根っこ(歯根)が露出しやすくなる

・歯肉が薄いと、歯周病や歯の周りの組織に加わる刺激に対して歯肉退縮しやすい

・歯並びの関係で、唇側の歯を支えている骨(歯槽骨)が薄いと歯肉退縮しやすい

などが挙げられます。

さらに、歯肉退縮を促進させる要因として、

  • 不適切なブラッシングを続けた場合(力を入れすぎたり、擦りすぎている)
  • 矯正治療により、元々骨が薄い、特に前歯の部分に矯正力をかけると、骨が減少しやすく、歯肉退縮が起こりやすいこと

などがあります。

術前 前歯部2歯分、元々あった歯肉のラインから約2-3㎜程度の歯肉退縮をみとめました。

口蓋部から結合組織を採取し、退縮部分に移植を行いました。

退縮部の根面にはエムドゲイン®を塗布し、セメント質の再生も促しています。

40代・女性
主訴:「前歯の歯ぐきが下がって見える」「しみることがある」


■ 初診時の状態

前歯部の歯肉に退縮がみられ、根面が露出していました。
歯肉退縮には複数の要因が関係します。代表的なものとして次のようなものがあります。

  • もともとの歯槽骨が薄い、開窓や裂開がある場合

  • 歯肉が薄く、刺激に対して退縮が起こりやすい場合

  • 歯並びの影響で歯槽骨の厚みが不足している場合

また、歯肉退縮を進行させる因子として

  • 強いブラッシング圧

  • 矯正治療後の歯槽骨の減少
    などが挙げられます。

本症例では、前歯部で約2〜3mmの歯肉退縮が確認されました。


■ 行った治療

歯肉退縮への対応として、根面被覆術 を実施しました。
根面被覆術とは、外科的に歯肉を移植し、露出した根面を覆うことを目的とした処置です。
今回は、口蓋部から結合組織を採取し、退縮部への移植を行いました。

※本症例では、治療計画上必要と判断し、移植部の根面に薬剤(エムドゲイン®)を使用しています。


■ 術後経過

術後約8か月の時点では、露出していた根面が被覆され、歯肉の厚みが改善した状態が確認されました。
経過観察を継続しながら、ブラッシング方法等の指導も行っています。


■ 費用

根面被覆術:88,000円(税込)/1歯
※自由診療(保険適用外)


■ 主なリスク・注意事項

  • 術後に痛み・腫れ・出血が生じることがあります

  • 歯肉の状態や骨の厚みにより、期待する被覆量に達しない場合があります

  • 生活習慣(ブラッシング圧や食いしばり等)により後戻りが起こることがあります

  • 術前の状態により経過や結果には個人差があります


■ まとめ

歯肉退縮は、見た目だけでなく、知覚過敏や清掃性にも影響することがあります。
気になる症状がある場合、治療方法はいくつかの選択肢があり、状態に応じて判断します。

まずは診査を行い、適応かどうかを確認することが大切です。
ご相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。


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