「治らない歯周病」の原因がセメント質剥離?|抜歯を決める前に知っておきたい歯根のトラブル

スタッフブログ2026.09.18

「歯周病の治療をしているのに、一部分だけ腫れが治らない」

「歯ぐきに何度もできものができる」

「根管治療をしたのに、なかなか骨が治らない」

このような場合、一般的な歯周病や根の病気だけでなく、まれに**「セメント質剥離(cemental tear)」**という状態が関係していることがあります。

あまり聞き慣れない病名ですが、近年、診断や治療について少しずつ知見が整理されている病態です。

セメント質剥離とは?

歯の根の表面は「セメント質」という薄い硬組織で覆われています。

セメント質剥離とは、このセメント質の一部が歯根の表面から剥がれてしまう状態です。

剥がれたセメント質が周囲の組織に残ると炎症が持続し、歯槽骨の吸収や深い歯周ポケット、歯ぐきの腫れ、膿の出口(サイナストラクト)などを生じることがあります。

そのため、一見すると普通の歯周病や根の病気のように見えることがあります。

歯周病や根管治療の病気と間違われることがあります

セメント質剥離の診断が難しい理由の一つが、症状だけでは他の病気と区別しにくいことです。

例えば、

・局所的な歯周病
・根の先に炎症が起こる根尖性歯周炎
・歯内―歯周病変
・歯根破折

などでも、似たような症状がみられることがあります。

そのため、「歯周病だと思って治療したけれど、一部分だけ治らない」「根管治療をしたけれど病変が残っている」という場合には、別の原因が隠れていないかを考えることも大切です。

CTを撮れば必ず分かるのでしょうか?

セメント質剥離は、通常のレントゲンだけでは確認が難しいことがあります。

症例によっては、**歯科用CT(CBCT)**を用いることで、通常のレントゲンでは分かりにくかった剥離片や骨の状態を立体的に確認できることがあります。

ただし、「治らない歯はすべてCTを撮ればよい」ということではありません。

歯周ポケットの深さや位置、歯の神経の状態、噛み合わせ、通常のレントゲン所見、これまでに行われた治療などを確認し、必要に応じて追加検査を検討します。

セメント質剥離でも歯を残せる?

患者さんにとって一番気になるのは、「この歯は抜かないといけないの?」ということだと思います。

セメント質剥離だからといって、必ず抜歯になるわけではありません。

剥離した部分の位置や大きさ、周囲の歯槽骨や歯周組織がどの程度残っているかなどによっては、剥離したセメント質を除去し、周囲の歯周組織を治療することで歯を保存できる可能性があります。

一方で、病変が広い範囲に及んでいたり、歯を支える組織が大きく失われていたりする場合には、残念ながら保存が難しいこともあります。

大切なのは、「何が何でも歯を残す」ことではありません。

なぜ治らないのかをできるだけ正確に診断したうえで、その歯を治療して残すことが長期的に患者さんにとってメリットがあるのかを考えることが重要です。

「一部分だけ治らない」は診断のヒントになることがあります

歯周病は、お口の中の複数の歯に影響することがあります。

一方で、

「この歯の、この場所だけ歯周ポケットが非常に深い」

「ほかの場所は落ち着いているのに、ここだけ何度も腫れる」

「治療しているのに、同じ場所から膿が出てくる」

といった場合には、一般的な歯周病だけでは説明できない原因が存在する可能性も考えます。

もちろん、これだけでセメント質剥離と診断できるわけではありません。

歯根破折や根管内の感染など、似た症状を起こす病気もあるため、さまざまな可能性を一つずつ確認する必要があります。

ごこちデンタルクリニックが大切にしていること

当院では、歯周治療、根管治療、マイクロスコープ、歯科用CTなどを活用しながら、**「なぜこの歯が治らないのか」**を考えることを大切にしています。

そして、保存できる可能性がある歯については、できるだけ歯を残す方法を検討します。

一方で、保存することで感染や炎症を繰り返したり、周囲の骨をさらに失う可能性が高いと判断した場合には、抜歯後の治療まで含めてご相談することもあります。

「残せるか、抜くべきか」だけではなく、その歯を残すことが将来のお口全体にとってプラスになるかどうかまで考えて治療方針を決めることが大切だと考えています。

まとめ

歯周病や根管治療を行っても、一部分だけ腫れや膿が繰り返す場合、その原因として一般的な歯周病や根の病気だけでなく、まれにセメント質剥離が関係していることがあります。

セメント質剥離は診断が難しい場合がありますが、状態によっては治療によって歯を保存できる可能性もあります。

「治療しているのになぜか一か所だけ治らない」

「抜歯と言われたけれど、本当に残せないのか知りたい」

そのような場合には、まずなぜ治らないのかを詳しく診査することが大切です。

ごこちデンタルクリニックでは、歯だけを見るのではなく、歯周組織や根管、周囲の骨なども含めて診査し、その歯を長く守るためにどのような治療が適しているかを一緒に考えていきます。